第8章 猫王子と夏休み
「ちょ、マジで急いでるんスけど…」
『うんごめん!よく分かってるけども!それより、奈央!』
奈央「うううううん!あの、きききき黄瀬君!」
「はい?」
奈央「こここここれ!!!落としましたよ!!!!」
「あー!それ俺のタオル!君が拾ってくれてたんスね!良かったー!次の試合で使うから探してたんスよね!ありがとうッス!」
奈央「!!!!!ひゃい…」
『な、奈央ー!!!!!!』
黄瀬君はよほど嬉しかったのか、奈央の手を握ってお礼を言った。そのせいか、奈央は顔を真っ赤にして意識を失ってしまった。
「えっ!?俺のせいッスか!?」
『他に誰がいるんだよ!奈央~…』
「い、いやぁ!イケメンすぎるってのも罪っすねぇ!」
『あぁん!?』
「じょ、冗談ッスよ…」
『あぁ、良かった。本気で言ってたら半殺しじゃすまないとこだったし』
「こわっ!あ、そうだ。お礼…」
『お礼、ね。じゃあ奈央のアドレス送るからそれに直接メールでも電話でもして言ってあげて。ほら、早く携帯出しな』
黄瀬君はいそいそと鞄を漁る。くそ、スマフォの最新機種じゃねーか、羨ましい。
「確かに受け取ったッス。君は俺に興味ないんスか?」
『はぁ?何で?』
「何でって…ほら、俺モデルだし?」
『残念だけど興味ないわ。つーか全ての女がアンタに尻尾振ると思わない方がいいよ。って、あたし犬だった』
「犬?」
『…アンタの元チームメイトの赤司が言ったんだよ』
「赤司っち!?赤司っちの友達ッスか!?」
『友達じゃなくて、王子と犬』
「王子!?もうわけが分かんないッス…」
『いいんだよ、それで。てか時間、大丈夫なの?』
「!忘れてたッス!あ、そうだ!アンタ、名前は?」
『…言わない。じゃあね」
奈央を担ぎながら黄瀬君の横を通り抜ける。後ろから黄瀬君の呼ぶ声が聞こえるけど、無視だ無視。だって…
赤司に見られてるような悪寒が走ったから。
『…何コレ超怖い!!!!』