第20章 猫王子とウィンターカップ
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「…、大丈夫か?」
『あ、あぁごめん、大丈夫大丈夫。ちょっとびっくりしただけ』
「…行くよ」
赤司はあたしの手を引っ張って歩いて行く。多分、怒ってるだろうな。それでもゆっくり歩いているから、あたしの足の事をちゃんと考えてくれてるんだと思う。素直じゃないなぁ。
『今日、試合あるの?』
「今日は無いよ。だが面白いモノが見れるはずだ。大輝対、テツヤ」
『…へぇ』
すぐに青峰対黒子の試合が始まった。青峰のいる桐皇がリードしているかと思えば、誠凛も負けじと食らいつく。
『す、げぇ…あれ、本当に黒子と青峰なの?』
「…僕の方がもっと凄いよ」
『はいはい』
それから時間は流れ、結果は黒子が勝った。青峰は悔しいというか、信じられないという言葉が似合っていた。
『赤司』
「…なんだ」
『あたし、行くべきだと思う?』
「…の好きなようにしたらいいさ」
『…なら行かない』
「…どうしてだい?」
『あたしが行っても、多分何も変わらない。あたしにはかける言葉が見つからない』
これは半分本音、半分…嘘。青峰の気持ちはよく分かっているつもりだ。負けるという事、その悔しさ。青峰に伝えたい事はいくらでもある。ここから潰れないためにも。
だけど、行けない。今のあたしはきっと、青峰に同情してしまう。無理しなくていいよ、って言ってしまいそうで、あたしはそれが一番怖かった。
「…はらしくあればいい。誰も責めたりなんかしない」
『…うん』
あたしは、弱い。