第19章 猫王子と誕生日
赤司side
『お、お邪魔します…』
「クスッ…初めてじゃないだろう?そんなにかしこまらなくていいよ」
『ど、努力します…』
もごもごと口を動かして恥ずかしそうに喋るが、可愛くて仕方がない。
「おいで」
僕が声をかけると、ゆっくりと足を動かす。そしてチョコンと僕が座っている椅子の反対側の椅子に腰かけた。
「…前にもこんな事あったよね」
『ガッ、ピー。不必要なメモリは、削除いたしました』
「僕のメモリからは消えてないよ。ほら、こっちにおいで」
はしぶしぶながらもこちらへと来てくれた。だけどその時間さえももどかしく感じてしまい、僕の方から歩み寄り、そっと抱きしめた。
『…最初から呼ぶな、ばか赤司』
「待てなくなったんだよ。最初からこっちに来ないが悪い」
『…くっつき魔』
「それでも構わないよ。やっと僕の想いが通じたんだ、の温もりも全て感じたい」
『…あっそ』
恥ずかしくなったのか、僕の肩ごしにぐりぐりと頭を擦りつけてくる。最近分かったのだが、これはが恥ずかしくなった時にする癖らしい。
の知らない事が、また1つと増えていく。そんな些細な事がこんなにも嬉しいだなんて。
『赤司』
「なんだい?」
『誕生日、おめでとう。産まれてきてくれてありがとう。あたしと出会ってくれてありがとう。…好きになってくれてありがとう』
あぁ、もう。どうしてこんなにも可愛い事を言うのか。ほらね、そしたら君はまた、頭をぐりぐりと僕に押し付けてくるんだ。