第17章 猫王子と訪問者
赤司side
バレー部が負けて…いや、監督がこの学校から去って早1週間。の顔にはべったりと作り笑顔が張り付けられていた。
を慕う者は全員気付いていたが、無理にでも笑顔を見せてくれようとするの姿に、皆何も言えなかった。
例外ではなく、僕もそうだった。
奈央「アカン、もうあんな見てられへん…なぁ赤司君、何とかならへんか!?」
「僕はに辛くなったら僕に頼れと言った。だからこそ、今は頼ってくれるまで待つ事しか出来ない」
奈央「そんな悠長な事言ってる場合やないやろ!?もうええ、ウチがどうにかする!」
川崎はズンズンと歩き、の元まで歩いて行った。が、いざあの笑顔を見ると怖気づいたのか、結局はいつもと変わらなかった。
何かきっかけでもあれば…
今日も部活を終え、疲れた体を癒すようにゆっくりと湯船につかる。芯まで温まった体に満足すると、お風呂を出た。すると机の上に置いていたスマートフォンがチカチカと点滅していた。
桃井からの着信だった。
「もしもし、桃井か。すまない、風呂に入っていた」
―「ううん、いいの!それより久しぶりだねーっ!元気だった?」
「あぁ、変わらないよ。桃井も元気そうだな」
―「うん!もうすっごく元気!あ、それで電話の要件なんだけどね、私の家族が京都旅行に行きたいって言って、青峰君の家族と一緒に京都旅行する事になったの!それで、赤司君の都合が合えば案内してほしいんだけど…(さつきー?何だよ、電話してんのか?)あ、うん。赤司君なんだけど…(赤司ィ!?)」
電話の向こうから聞こえた声は大輝だ。相変わらずあの幼馴染たちは仲がいいらしい。
「都合が付けば構わないよ。それより、いくらWC出場が決まってるからって、随分と余裕だな」
―「そういうわけじゃないよ。体育館の都合でどうしてもオフが出ちゃって。来週の土曜日なんだけど…」
「来週の土曜日か…すまない、僕は練習が…いや、引き受けよう」
―「え、いいの!?青峰君、赤司君おっけーだって!(はぁ!?マジで!?)」
「あぁ。時間が分かり次第また連絡してくれ」
桃井との電話を切った後、僕は手帳に二重丸を付けた。