第16章 猫王子と怪我人
『っ…』
「!!!」
『…だよ…』
「…?」
『痛いんだよ!!!!あれから1か月経っても痛いんだよ!!!普段はあまり痛くないのに、バレーになると痛むんだよ…』
「完治まで無理をしない方がいい。余計悪化してもっと時間がかかるぞ」
『分かってる!!分かってるよ…けど、休んでる暇なんてない。もうすぐ新人戦なんだ。皆は絶対勝つって練習頑張ってる。あたしだって赤司が教えてくれたように、マネージャーとして頑張ってるつもりだった。でも…聞いちゃったんだ』
「…何を聞いたんだ」
『監督と理事長の話。洛山高校バレー部は府内でも結構有名でね、期待もされてるんだよ。まぁバスケ部とは比較にならないけど。だけどあたし達は毎回2位止まり。今年のIHにも行けなかったしね。実際にはそれがもう10年も続いてる』
「聞いた事があるよ」
『そっか。今の監督が指揮を取るようになってから洛山高校は優勝できなくなったって言われてるの。実際は監督のせいじゃなくて、府内のある学校が県外から強い選手を高額なお金と優遇な環境を餌に入れてるだけ。汚い話だよね』
珍しい話ではない。生徒に莫大なお金を払ってでも名声を勝ち取れば、自然と生徒も集う。裏の世界では有名な取引だ。
「明らかに違法だろう。どうして言わない」
『言えないよ。実は…あたしもその学校から推薦、来たんだ。その時に裏の世界を知った。あたしは悔しかったけど、そんな相手を自分が倒せるって思ったらわくわくしちゃってさ、黙認したんだ。今思えばそれが原因だったんだよね』
「…原因?」
『そこの理事長は脅しをかけてきた。断っても構わないけど、もしこれを連盟にでも通報したらどうなるか。…洛山高校を潰すって言われたよ。ここには大事な友達がたくさんいる。だからあたしが言わない事で守れるって勝手に思ってた』