第1章 〈ハジマリ〉
其処は何も無い場所でした。
けれど彼女は無意識に、何か無いかと辺りを見回します。
彼女は、どうして自分がその場所にいるのかが分からないのです。
何故なら彼女___シャルルは、自分が生きてきた筈の17年を
…全て喪ってしまっていたから。
そんな中、何も無いと思っていた場所から、帽子を被った男がシャルルに話しかけてきました。
お前、どうしたンだ?
何故こんな×××だらけの所に座り込んでいる?
そう云われて、シャルルはもう一度辺りを見回しました。
何も無いと思っていたその場所には、
屍体の山があったのです。
これは、お前がやったのか?
帽子の男はなおも訊いてきます。
でもシャルルには分からない。
何故分からないのかすらも分からない。
男は呆れたように、はぁ、とため息をつき、シャルルに手を差し伸べました。
「とりあえずお前、一寸こい。
俺が居る______【組織】に」
シャルルは自分に向かって差し伸べられた手を取りました。
其れは、その手は、酷く温かかったのです。
この人なら、とシャルルは思いました。
この人なら、この温かい手をしたこの人なら。
私が何なのかを教えてくれるかもしれない。
喪ってしまった記憶を取り戻させてくれるかもしれない。
そしてシャルルは、失くした自分を探す為に
男の手を取り立ち上がったのでした。
_______此れから行く先がどんな処かも知らない儘に。