イケメン王宮、真夜中のシンデレラ/ALLキャラ短編集
第16章 始まりの合図~シド編~
"貴女には、これからウィスタリアのプリンセスとして頑張っていただきます"
そうジルに言われた私は、毎日慣れない公務や勉強に追われていた。
(…少し、疲れたな……)
そう思いつつも、愚痴を溢せる程の成果を上げられていない私は、重い体を引き摺るようにして書庫へと続く道を歩いて行った
―――――……
(あれ…?レオかな…?)
書庫へ入ろうとすると、その扉が僅かに開かれているのが目に入り、不思議に思いながらも私も中へと足を踏み入れて行った
「あれ…?誰…?」
書庫へ入ると、そこには見慣れない、綺麗な海のような色をした髪の長身の男性がいた
??「よお、プリンセス。噂には聞いていて知っていたが…会うのは初めてだよな?」
ニヤリと意地悪な笑みを浮かべるその人を見つめながら、私は恐る恐る口を開いた
「私のことを知っているんですか…?貴方は一体…」
ジル「俺の名前はシド。情報屋だ。ジルはお得意様なんだよ」
「シド……あっ、私の名前はユヅキと言います。よろしくお願いします」
そう言って僅かにドレスの裾を持ち上げてお辞儀をすると、シドはからかうような笑みを浮かべた
シド「ふーん…ユヅキねぇ~…それにしても、色気のねえプリンセスだな。そんなので男を惚れさせて、立派な次期国王候補を選べんのかよ」
「なっ…!?初対面なのに失礼じゃないですか!」
シド「まぁそう怒んなよ。色気はねえけど、なかなか可愛い面してんだからよ。…じゃあな、プリンセス」
そう言ってヒラヒラと手を振りながら去って行くシドの背中を、複雑な気持ちで黙って見送った私は、近い未来にこの人と結ばれることを、その頃はまだ知るよしもなかった