第12章 温泉旅行へ*1日目昼編*R15
政宗と手をつないだまま、温泉を覗いてみたり、料理人に食材を見せてもらったり。手を繋いだままだと、どうしても宿の人たちからの目が気になる。
恥ずかしさを訴えて手を離すのは簡単なことだったんだろうけど…。なぜかそれは出来ず、結局一緒にいる間、ずっと手を握ったままだった。
「ちっ…時間か」
玄関近くまで戻ってきた所で立ち止まる。
「時間?」
「ああ…ほら」
政宗の指すのは、廊下の先からこちらへ来る、
「光秀さん?」
「交代だ。…じゃ、また飯でな」
「あ…うん」
繋いでいた手をそっと離すと、頭をぽんぽんと撫でて行ってしまった。
「桜」
政宗の背中を目で追っていた桜。光秀の声に、彼がすぐそばまで来ていることを知った。
「約束していたな。風呂に行くか?」
「…ええ!?」
「冗談だ」
驚きの声を上げる桜にサラリと言ってのけ、履物をはいて玄関から振り返る。
「行くぞ」
「どこに…あ」
日程をふと思い出す。
そういえば、川下りってなっていたような。
宿を出て、二人で馬に乗る。上流に向かってしばらく進み、川沿いに出る。緑に囲まれた川岸に、既に用意が済んだ舟が待っていた。
「お待ちしておりました。どうぞ」
船頭が先に乗り込み、舟が揺れないよう押さえる。光秀は難無く乗り込むと、桜を見る。