第11章 温泉旅行へ*1日目午前編*
「お前は勘違いしてるかもしれねえが」
カタン、と飲んでいた湯呑を盆に置いて、政宗の真摯な視線がこちらを向く。どきりとした桜の手を、優しく包み込むようにぎゅっと握って、
「俺は、好きな女にしか言ってない」
「…え…」
それはつまり。
「えっと…」
政宗の顔をまじまじと見たまま、思考停止してしまった桜。ふっと笑うと、手を握ったまま顔だけを近づけて、ちゅ…と口づけた。
「……ッ!?」
呆けていた桜の顔が、ぼっという音がなりそうなほどの勢いで赤く赤く染まる。空いた手で、口づけられたことを確かめるように、唇に触れた。
「好きだ、桜」
「あ…」
桜が言葉を紡ぐ前に、政宗に強く引き寄せられた。ガチャン、という音と共に、盆が動いて湯呑が倒れる。
「答えは、この旅の後でいい…」