第11章 温泉旅行へ*1日目午前編*
「どしたの、政宗。顔が怖いんだけど」
政宗の眉間の皺がすごい。
つい触りたくなってしまって、人差し指でつつく。
その手を政宗に掴まれて、引き寄せられた。
「おい、あいつに気を付けろよ」
「あいつ?」
「吉次とかいう男だ」
「さっきの人?どうして」
ご主人と共に部屋を出て行った吉次さんを思い返す。確かに、ちょっと行動が積極的で驚いたけど、悪い人じゃなさそうだった。
「あんなに馴れ馴れしく女に触る奴なんて、ろくなもんじゃない」
「お前も似たようなもんだけどな」
秀吉さんが苦笑しながら言う。
私から言わせれば、あなたもなんですけど。
「政宗…お前いいのか?」
「は?」
信長様にお酒を用意して、自身も寛ぐ姿勢の光秀さんが、まだ憤ったままの政宗を見る。
「ここに居たいなら、俺は構わないがな」
光秀さんの言葉に、政宗ががばりと立ち上がった。驚いて見上げた私の腕を、強引に引っ張る。
「ちょっ、痛い!政宗何なの?!」
「いいから来い、桜!」
ほとんど引きずられるようにして、広間を出た。
残った皆が、顔を見合わせて笑っているのが見えた…。