第11章 温泉旅行へ*1日目午前編*
予定は、日を午前、昼、午後とわけて二日間。予定が書き込まれている所もあれば、時間だけとられて空白のところもある。
出発前に、二泊になったことを知らされて驚いた。皆忙しいのに、三日も城を開けるつもりらしい。
理由を聞いた桜に、政宗は意味深な笑みを浮かべ、「六人いるからな」とだけ言ったのだ。
「ね、政宗が言ってたのどういう意味?」
「何のことだ?」
「六人いるからって。私達、七人だよ?」
「それは…」
説明しようとして止まる。
この子にどこまで述べたらいいのだろうか。
皆がお前を手に入れたくて、旅行という特別な機会を利用するんだって?
皆で抜け駆け禁止の協定を組んで、それぞれで二人の時間を平等に取るために、昨日お前が部屋に戻ってから、いい年した男達がくじ引きしたんだって?
出発の馬から食事の席、部屋割りまで細かく既に決まってるんだって?
「秀吉さん?」
「はっ!…あ、悪い」
「大丈夫?」
ぐるぐると思考の渦に飲まれていた秀吉が、桜の心配そうな顔に「ああ」と答えて現実に戻る。桜は、先程の質問の答えを求めるわけでもなく、ならよかったと微笑んだ。
ふわり、という効果音が似合いそうな、見ている方が蕩けてしまうような笑顔。今だけは自分だけに向けられていることが嬉しい。
「お前、いい匂いがするな」
「へっ?!」