第11章 温泉旅行へ*1日目午前編*
翌朝。
まだ薄暗い内から起き出し、軽く朝食を済ませた一行は、馬に跨がり目的地を目指していた。
「どのくらいかかるの?」
「一刻くらいだろうな」
尋ねれば、そう返事が返ってくる。桜は、秀吉と共に馬に乗っていた。
信長様に手解きを受けて、桜も一応馬に乗れる。荷物もあるし、自分の身くらい自分で運ぶと言ったら、皆からそれはもう凄い勢いで却下されてしまい、些か不機嫌である。
「私も自分で乗りたかったな」
「まぁそう言うな。お前に何かあってからじゃ遅いからな?」
慈愛の籠った目で見つめられたら、反論できない。自分を心配してくれる皆の気持ちはとても嬉しくてくすぐったいけれど、たまには信頼してくれてもいいと思う。
「みんな過保護すぎるよ。子どもじゃないんだし」
「んー…まあ、な…」
秀吉が苦笑しながら頷く。桜の言うことは間違ってはいない。けれど大抵は、桜に危ないだの心配だのとこじつけて、自分の傍においておきたい男達の我が儘だ。
「それより、さっき渡した日程は見たか?」
「そういえば…」
ガサガサと、懐から紙を取り出す。出発前に、政宗から渡されたものだ。広げて見れば、丁寧に到着後から帰るまでの予定が書き込まれている。
「もし何かお前がやりたいことがあれば変更するから、言えよ?」
「うん、ありがとう」
秀吉に笑いかけてから、予定のひとつひとつに目を通していく。