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【イケメン戦国】紫陽花物語

第33章 キューピッドは語る Side:You <豊臣秀吉>





俺の言葉をじっくりと噛み締めるように、手の中の文を握りしめたまま、秀吉さんは立ち尽くしてる。眉間には微かに皺が寄り、どうすればいいのか考えてる、そんな表情。



「疑問が解決したのなら、早く追いかけてやったらどうだ」

「同感だな、お前が行ってやらねえと、さとみも戻ってこられねえだろ」

「秀吉様、行ってらっしゃいませ」



胡坐をかいた足の上に肘をついて、にやついた顔の光秀さんがそう声を掛けた。静かに俺と秀吉さんの会話を聞いていた政宗さんも、秀吉さんの後ろからダメ押しの一言。三成は…意味、分かってないだろ絶対。

でも迎えに行くのは、俺も同感。さとみの事だから、どうせ秀吉さんに振られちゃったって決めつけて、一人でめそめそしてるに決まってる。



「ああ」



秀吉さんはさっと踵を返すと、大股で広間の入口へ向かおうとして、まったく同じ動作で戻って来た。信長様の前まで進み出て、頭を下げる。



「申し訳ありません、お館様。しばし退席させていただきます」

「構わん。さっさと行け」

「ありがとうございます!」



秀吉さんは今度こそ、広間を出来る限りの早足で出口まで向かうと、脇目も振らず姿を消した。

・・・さとみがどこに行ったか、探し回る羽目にならなきゃいいけど。



「はあ…」



どっと疲れた。お腹も空いたし、もう俺にやる事なんてない。後はあの二人次第、か。結果は見えてるけど、くっついたらくっついたでまた騒がしくなりそうだな…。



「何をしている、貴様ら」

「は…?」



腰を下ろして一息ついた所で、上座からの声。少し高くなったそこを見上げれば、心から愉快そうな信長様が既に立ち上がってた。



「いつまでもはっきりしないあやつらに業を煮やしてさとみを軍議に呼んだが、実に面白いことになった。見逃す手はない…行くぞ」

「はっ」



同じように楽しそうな光秀さんと政宗さんが信長様の後ろに続いて、さらに良く分かっていない三成もにこにことついて行く。


…本気?何が楽しいのか分からない。俺は行かないよ。

けれどそんな俺に気づいて戻って来た政宗さんに引きずられて、見たくもないいちゃつきの現場へ行くことになってしまった。


ああ、食事が遠くなる…。

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