第33章 キューピッドは語る Side:You <豊臣秀吉>
明るい陽射しが降り注ぐ道。秀吉さんの御殿からお城へ帰るために歩いている私の体は、疲労と落胆でずっしりと重い。
「はあ…」
自分の情けなさが悲しくなってため息をつけば、隣を歩いていた家康も、同じように肩を落としてた。
「あんた・・・なんでそんなにおっちょこちょいなの?」
「知らないよ…私だって今落ち込んでるんだから…」
秀吉さんの御殿での食事会について来てくれて、いつもは冷たくあしらってばかりの三成君の相手までしてくれた家康は、私より疲れてるみたい。
少しは秀吉さんとお話することが出来たと思うけど、関係は全然進まないまま。こんなことじゃ、いつまでたっても告白なんて無理だよ…。
「ねえ、家康」
「何」
「もう、どうしていいか分かんない…」
遠くを見ながらぶらぶらと歩いていた家康が、その目線を一瞬だけ私に向けた。戻した視線で、城をじっと見つめてる。
「ふうん…じゃあ、諦めれば」
「それは…」
諦めたくないよ。伝えたい。なりふり構わず、あなたが好きですって、言いたい。でも、秀吉さんの優しい笑顔が私に向いてくれなくなったら、どうしよう。そんなことになるくらいなら、いっそ今のままの方が幸せなんじゃないかって思ってしまう。
「まあ、俺はあんたが秀吉さんと恋仲じゃなくたって、どうでもいいけどね」
「えーっ」
「…うるさい。だってあんた、秀吉さんに何も言わない内から諦めるんでしょ。それじゃ俺がいくら手伝ったって、意味ないし」
「うう…」
ふん、と鼻を鳴らした家康に図星をつかれて、言葉が出ない。家康の言う事ももっともだけど、私のこの葛藤、分かんないかな…あ、そっか。
「家康、恋とかしたことないでしょ」
「…だったら何」
「そうだと思った!家康にはこの悩み、分かんないだろうなあ」
「……」
普段さんざんドジだと罵られてるから、少しくらい反撃してもいいよね。面白くて笑いながらそう言ったら、家康は無言でくるりと元来た道へ取って返した。
「あれ…どこ行くの?」
「俺には分かんないみたいだから、秀吉さんに聞いてくる」
「ちょ、ちょっと待ってよっ」
焦って追いかけるけど…は、速い。慌てて走って追いついて、家康の腕をがっちり捕まえた。