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【イケメン戦国】紫陽花物語

第25章 それゆけ、謙信様!*猛進編*




大会当日の今日。安土の町は大会に出場する者、それを応援に来た者が入り乱れ、活気に満ちている。

桜は、信長と共に城の傍の桑畑まで来ていた。その一部は整地され、設置された天幕やのぼり旗が風になびく。



「よし…整ったな」



過不足なく準備が整っていることを確かめた信長は満足気だ。

会場の隅には、出場者たちが使用する予定の的や武具が並び。広く取られた演武のための空間を見渡せる一番良い場所には、信長以下武将達が居並ぶための席が用意されている。

桜が共に座るため、本来なら床机が並べられるだけでいいところを、厚い畳が敷かれてゆっくりと足を崩せるようになっている。



「私はどこに居たら良いですか?」

「貴様はここだ」



信長が閉じた扇子の先で示すのは、真ん中より一つ隣。信長の横だ。



「女が見ていると思えば張り切る輩もいる。せいぜい愛想よく笑っていてやれ」

「はあ…」



そういうものなのか、と首を傾げていると、それぞれの仕事の仕上げを終えて、他の武将達も集まってきた。



「準備が整いました」

「出場する者達も、間もなくこちらへ到着予定です」



光秀と秀吉の報告に、信長が頷く。秀吉の言葉通り、少しずつ出場者たちが集まりだし、ざわめきが増してきた。



「何か手伝うことはある?」

「いや、ない。それより、お前にはこれをやる」



桜が尋ねると、答えた政宗がどさりと風呂敷包みを渡してきた。包まれているために中は見えない。



「男どもの特技なんて見てても、お前は退屈だろうと思ってな。作って来たから、それでも食って笑ってろ」

「ありがとう、政宗」



正直、その通りだった桜は嬉しかった。自分の座る場所まで風呂敷を運んで、そっと解く。



「うわあ…!」

「おお」

「相変わらず素晴らしいですね」



おこわのおにぎりや佃煮、甘露煮。様々な果物や、餡子やきな粉をまぶした餅。桜の後ろから覗き込んでいた武将達も感嘆の声を漏らす。



「きな粉餅、ちょうだい」

「家康…お前はちゃんと見とけよ?」

「分かってますよ」

「ふふ、皆で食べようよ」



桜は政宗に反論する家康のために、きな粉餅を取り分ける。

空は快晴。風は穏やか。
…今日も、いい天気だ。
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