第23章 温泉旅行へ*信長エンド*
「では…貴様の望むまま、ずっとこの手を離さないと誓おう」
「信長様…」
「違うか?」
「…いえ」
口端を上げて笑いかければ、握る手を見つめる桜が、曇りない笑顔で笑う。その瞳が潤みだし、堪えるようにぱちぱちと瞬いた。
過去を悔やみ、己の行いを恥じた所で、帰ってくるものなど何もない。恨みを持つ者が来れば相手になるし、立ちはだかる者がいれば倒していく。
ただ、この手は。
人を殺め血で染めたこの手でも、桜がこうして欲する限り、決して離すまい。どれだけ虫が良くても、許されるべきでなくとも、桜だけはこの手に繋ぎ止めておきたい。
離れるのは…この命が果てる時だ。
死んだ後も同じ場所へ。そう約束出来ればどんなにいいか。何人もを手にかけた己と、純粋で優しい桜では、それも叶うまい。
それならば、せめて。
「俺も…貴様に触れすぎた。この身はもう、貴様以外愛せないらしい」
「…はい」
この世に共に在る限りは。
心から愛を叫ぼう。
この手が離れない限りは。
抱き合っていよう。
桜を愛した事、
後悔など決してしない。
愛された事、
後悔など決して、させない。
「桜、この俺と共に生きる気はあるか」
「…もちろん、あります」
強い瞳の光が、その覚悟と愛にきらきらと輝いている。夕陽や星などより、遥かに気高く美しい。
「そうか。では」
それを焼き付けるようにゆっくりと瞬きをしてから、信長はいつもの不遜な笑みで笑った。
瞳にだけは、溢れんばかりの愛と優しさをたたえて。
「貴様の未来全て…俺に寄越せ」
「はい…っ」
星の祝福の下。
繋いだ両手をそのままに、二人は口づける。
それはさながら、誓いの口づけ。
流れ星が、落ちた。