第20章 温泉旅行へ*秀吉エンド*R15
信長と桜が散歩から戻り、広間へ顔を出す。すでに夕食の準備は整い、皆が着席して二人を待っていた。
「お帰りなさいませ、信長様。桜も」
「うむ」
「ただいま、秀吉さん」
出迎えてくれた秀吉の誘導で、信長は上座に腰を下ろし、桜は秀吉と家康の挟まれた席へと腰を下ろした。
「桜様、お茶をどうぞ」
給仕に立ちまわっていた吉次が、湯呑を差し出してくれる。ありがたく受け取って飲み、一息ついた。
「桜、あちこち行って疲れただろ。食事くらい、ゆっくりとれよ?」
「うん、ありがとう」
秀吉の優しい笑顔と気遣いが嬉しい。各々が食事をとりはじめて、広間がいつものにぎやかさに包まれる。
「桜、これ食べたか?」
「うん、美味しいね」
「お茶、まだあるか?」
「大丈夫だよ」
自分の食事などそっちのけで、桜の事をずっと気にしてくれる秀吉。思わず笑いながら返事をする。
「良かったな、桜。せいぜい母親に甘えておけ」
「それ、俺か?せめて父親って言ってくれ」
「いや、母親だろ」
秀吉の向かいに座る光秀の言葉に、秀吉が眉をしかめるけれど、政宗が愉快そうに破顔する。
「そういう政宗さんも、どちらかというと母親寄りですけどね」
「言ったな、家康。お前はせいぜい生意気な弟って所だな」
「何で俺が桜より下なんですか」
不服そうな家康の正面で、三成がふうむと考える。
「では私は…」
「お前は飼われてる犬」
ぴしゃりと言い切る家康に、三成がきらきらと瞳を輝かせる。
「皆様に可愛がって頂けるお立場を下さるなんて…家康様は本当にお優しいですね」
「自分だけ人扱いされてないことにまず怒れよ。何でいつもそんなに前向きなの、お前」
はあ、とため息をつく家康の横で、桜は楽しくて仕方がない。くすくすと笑っていると、上座から信長が桜を見た。
「来い、桜」
「あ…はいっ」