第4章 ずぶ濡れの恋心<真田幸村>
「おい、何言ってんだ」
「幸村は、どう思う?」
「…は?」
佐助に尋ねられ、怒りがどこかへ行った幸村は、話についていけていない桜の顔を見る。
髪も肌も、しっとりと湿っていて、手ぬぐいで顔や髪を拭う仕草とか綺麗だし、佐助に褒められて上気した顔はとても可愛い。
「っ!…別に、普通だろ」
「そうだよな、色っぽいよな」
「言ってねーよ!」
うんうんと真顔で頷く佐助と、赤くなって否定する幸村。二人の掛け合いに、桜は笑う。
「二人とも、面白いね」
「面白いのは佐助だけだ」
幸村が憮然として言い返すけれど、佐助が不思議そうな顔をする。
「俺、何か面白いこと言ったかな。…まあ、幸村は確かに面白いってより、可愛いよね」
「はぁ!?俺が何で可愛いんだよ」
素っ頓狂な声を上げる幸村をニヤリとみて、
「雨続きで桜さんに会えなくて、いじけてたとことか」
「お、おまえ…」
桜の前で急に暴露され、開いた口が塞がらない。しかし、だんだんと顔に熱が集まっていく。
「それでさっき、あんな勢いで抱き着いてきたの?確かに幸村、可愛い。犬みたい」
「……!!」
さらりと、桜にも先ほどのことをばらされ、もはや恥ずかしさにわなわなと手が震えだす。
「あぁ、それで桜さん濡れたんだね。いけないんだ~、しんげんさまに、いってやろ~」
あくまでも、真顔で、佐助が言う。
ブチ、と幸村の頭で何かが切れた。
「お、お前ら…いい加減にしろ!!」
雨の空に、幸村の怒号が響いた…。
終