第18章 温泉旅行へ*政宗エンド*
必死に胸を叩き、押し返してくる桜をようやく解放してやると、真っ赤になった顔が怒っている。
「ま、政宗っ!何で…」
「さっき出来なかった事をしただけだ。それに、お前が俺の物になったこと、こいつらに教えてやらねえとな」
「だ、だからって…!」
羞恥と、怒りと、ほんの少しの嬉しさと。複雑に感情が入り乱れ、言葉がちゃんと出てこない桜が政宗をぽかぽかと叩く。それを、はいはいと受け止めている政宗の様子に、秀吉は全てを悟った。
悔しいが…ま、仕方ねえ。
桜が落ちていくのを目にして、本当に肝が冷えた。自分の位置からは到底手など届かなくて、ただ見ていることしか出来なかったことを悔やんだ。今、桜がこうして無事でいるなら、それでいい。
苦笑しながらそう自分に言い聞かせていると、横にいた三成がふらふらと揺れ出した。
「…三成?大丈夫か」
「秀吉様…私は今度こそ病かもしれません…」
「それはたぶん…違う。安心しろ」
何が安心なのかは良く分からないが。秀吉に支えられながら、失恋の痛みというやつを、三成が身を持って体感している一方で。
「桜…悪かった」
「もう…恥ずかしい…」
頬を膨らませて怒る桜の頭を優しく撫でてやれば、怒っていたはずの顔はすぐに嬉しそうに綻ぶ。
口づけた後の、上気した顔が政宗の想像を越えていた。二人きりなら、我慢出来なくなっていた所だ。他の奴にあの顔は二度と見せたくない。
「続きは後でな」
「え…」
政宗の囁きに動きを止める桜をニヤリと見て。戻ろうと先に行く秀吉達に続いて、桜の腰を抱いて歩きだす。その温もりをもう、決して離さないと誓いながら。
政宗エンド 終