• テキストサイズ

【イケメン戦国】紫陽花物語

第16章 温泉旅行へ*2日目昼編*



「何してるの、ぶつかるでしょ」

「ありがとうございます…」

「子どもじゃないんだから、急に走り出さないの」

「はい…すみません…」



自分の行動が今になって恥ずかしくなる。何故か敬語で小さくなる桜をふっと笑って、家康がそのまま手を引いた。



「仕方ないな…ほら、行くよ」

「…うん」



今度はしっかりと確認してから、二人で通りを横切る。店の前まで来て、じっと商品を見る家康。



「買いたいもの、あった?」

「うん…少し、待ってて」

「うん」



桜も、家康にならって商品を眺めてみる。一口に薬草と言っても色々あるようで、植物全体が乾燥させてあったり、根や花、実などの部分的なものだけ取り出してあるものも多い。もともと植物自体に詳しくない桜にとっては、何が何なのか皆目見当もつかない。

早々に飽きてしまって、手を繋いだままの家康の横顔をそっと伺う。真剣な眼差しに、心が騒ぐ。

耐えきれずに慌てて顔をそらすと、



「退屈なら…隣でも覗いてなよ」



桜がつまらなそうにしていると思ったのか、家康がそう言って手を離してくれる。



「じゃあ、そうするね」



言葉に乗じて隣の店へ避難する。小間物屋だ、ここなら桜が見ていて楽しいものもたくさんある。

薬草を選別している家康をもう一度だけこっそりと見て、一つ深呼吸。気持ちを落ち着かせてから、桜も買い物を楽しむことにした。
/ 399ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp