第15章 温泉旅行へ*2日目午前編*
「申し訳ありません、痛かったですか?」
「あ、ち、違うよ。びっくりした…だけ」
「そう、ですか…」
「ありがと…」
頬を染めて黙り込んでしまった桜の顔から、三成は目が離せないでいた。
この旅行の計画が形になった際、他の武将達がなぜあれほどに必死になっているのか不思議だった。桜のことを大切に思う気持ちは、もちろん誰より負けていないつもりだし、傍にいて欲しいとも思っている。
しかし、恋だの愛だのという明確に説明できない事象に、この気持ちが果たして当てはまるのか。
いつからだったか、桜の事を思うと胸が苦しくなるようになった。他の男性といる所を見ると、それは一層激しくなった。
自分が何か患っているのではないかと、家康に相談してみたことがある。彼は黙って聞いた後、それは病気ではないと一言三成に告げた。それ以上説明したくない、とも。
病気でないことに安堵しながらも、相変わらず胸は苦しい。そんな中、戦術研究の書物の中に混じっていた恋物語を読んだ。戯れにと読んだつもりだったのに、引き込まれた。恋をして苦しむ主人公が、あまりにも自分に投影できたから。