第17章 急ぎ、草へ
磯影が草にいる。
とち狂うにも程がありますよ、浮輪さん。
磯については牡蠣殻磯辺と出会ってから折に触れてその痕跡を辿りながら、真偽こき混ぜて様々な情報を掻き集めてきた。
磯と草には始祖からまつわる確執がある。
水で医療忍者をしていた男が妻を連れて流浪の果てに造ったのが磯、その男に見切りを着けて磯を出た妻が造ったのが草。
夫婦喧嘩がこじれて今に至ったようなもの。下らないが物事の来し方とはそうしたものかもしれませんねえ。
切欠が下らない程こじれて後々面倒になる。大義の追い付かない名分は兎角上に立つ者の足を引っ張るもの、すり替えねば下の者が従わない。
二里はもともと一つ里だったのだ。
阿杏也のしようとしている事はあながち見当外れではない。磯と草を元の形に戻そうというのだから。
「・・・これって一発殴っちゃっても大丈夫なモンかね」
印を結んで意識を飛ばした鬼鮫を見下ろして飛段が真顔で言う。
「試してみろよ、止めねえよ、オイラは。うん」
手近な岩に腰掛けたデイダラが味気なく答えた。
「それより他の連中に説明すんのがメンドくせェよ。どうすんだ、こんなんアジトん前に置いといていいわけねえぞ。看板なんかいらねんだからよ、暁にゃ」
「あぁなぁ・・・イタチとか俺ならまだしもなぁ・・・」
「・・・オメエホントおめでてェよな、うん。兎に角退けとかねえと。USJじゃねんだぞ、ここは」
「ハハハ、ジョーズか?ジョーズのアトラクションな?」
「あー、ハリー・ポッターじゃねえのは確かだな。笑ってねえで中から誰か呼んで来いよ、うん?」
「自分で呼んで来いよ、俺ァ疲れたから寝る」
「マイッペースなヤツだな、うん!?」
「ほっときゃいんだよ、好きでやってんだからよ」
生欠伸しながら飛段は鬼鮫とデイダラを見比べた。
「構って欲しくてこんな真似してんじゃねえだろ。ほっとけほっとけ。変に手ェ出して怒らせたら反って面倒な事にならァ」
「フン?ま、確かにオイラが気にするこっちゃねえか。誰が来る訳じゃねえしな、うん」
「だろ?ほっとけほっとけ」
実際鬼鮫は残して来た実体どころではなかった。