第56章 ありったけの感謝を込めて
合宿最終日前日。
ここに来て初めて、スッキリ目が覚めた。
「んっ…」
グーッと伸びをすると、隣に置かれた黒いジャージが目に入った。
「あれ…これ………蛍の?」
雑に置かれたジャージを綺麗に畳み、昨日のことを思い返す。
「んー………ダメ、思い出せない…」
いくら考えても思い出せず、断念する。
「あ、波瑠ちゃん起きた?」
「はい」
「体調大丈夫?まだ少し怠い?」
「え、体調…ですか…?
大丈夫ですけど」
なんのことを言っているのか分からず、首を傾げる。
「キョトンとしてるね、覚えてない?」
クスクスと口元を押さえて微笑む。
「私…昨日どうかしたんですか…?」
「昨日、烏養さんに頼まれて買い出しと倉庫に行ったのは覚えてる?」
「はい、それは。
でも結局お店閉まってて買えなかったんですよね」
「そう。
それで倉庫の荷物だけ取りに行ったのは?」
「覚えてます」