第52章 勝負とプールと企み
「監督、止めなくて良いんですか?」
「何を止める必要がある?溝口くん」
「何って、あの及川のサーブですよ。
普通の女の子に取れる筈…怪我して終わりですよ」
「いーや、取れるぜ。
あいつはうちが誇る最強のマネージャーだからな」
烏養さんが自慢気に口を挟む。
「観察が凄いのは認めますけど。
けどただのマネージャーなんかに一体何が…」
「彼女はただのマネージャーなんかじゃない。
柏木波瑠、通称クイーン。
北川第一女子バレー部の絶対的エースだった選手だよ。
噂によるとだが女子選手とは完全に別格で、練習はいつも男子と混ざってやっていたそうだ」
「え?と…」
「つまり、それだけの実力者だよ。
昨日及川に聞いたが、あいつが尊敬する選手だそうだ」
「及川が…尊敬する選手…」