第50章 安眠
「待ってます、って何?
あれって遠回しに来いって言ってるんでしょ」
身体を起こしながら言う。
「まぁ、言い方変えるとそうだね」
これ以上負担をかけないよう、私も姿勢を整える。
蛍と話してるとなんだか落ち着くな。
変に気を張らなくて良いというか。
蛍も同じように思ってくれてたら良いな。
「そろそろ寝なくて良いの?
明日に響くんじゃない?
明日もきっとハードな練習だよ」
立つことはせず、そのまま壁に背を預けた蛍。
「波瑠こそ寝ない訳?
僕より動いてるでしょ」
「流石に選手以上ってことはないよ。
でも、もう少しだけこうしてたい…かな」
出来るのならば。
「蛍と居ると、なんというか…安心する」
「天然程怖いものはないよね」
「?」
なんのこと?
「良いよ。
波瑠が安心するならもう少し隣に居る」
そう言うと距離を詰めた。
肩や腕がぶつかるぐらい、至近距離だ。
緊張する。
でも不思議とこの緊張は不快ではない。