第50章 安眠
床に着いてから数時間。
目は覚めるばかりで一向に眠れない。
散歩でもして気分転換しようかな。
他の人を起こさないよう、ソッと布団を抜け出す。
携帯を持ち、上着を羽織って特に目的もなく歩く。
「…静かだな」
昼間の喧騒が嘘のように静まり返っている。
「こんな夜中に何してんの?」
「っ⁉︎け、い…」
いきなり声をかけられ、危うく大声を出すところだった。
「驚かさないでよ」
「君が勝手に驚いたんでしょ」
「そうだね…。
もしかして蛍も眠れないの?」
「部屋が騒がしくてね」
「あー…」
「波瑠も?」
「そう。
なんか落ち着かなくて」
「そっちは煩いって訳じゃなさそうだし、寝ようと思えば慣れるんじゃないの?」
「大部屋に比べたらそうだろうね。
静かには静かだよ」
静かだけど、眠れないものは眠れない。
「少し一緒に居ない?
蛍が眠くなるまでで良いんだけど」
「良いよ、別に」