第37章 誘惑
「波瑠、今日は親帰って来る?」
「え?と…来ない、けど」
いきなり呼び捨てで呼ばれ、身体が跳ねる。
「泊まっても良い?」
「着替えないよ、サイズ合わないし」
「着替えは余分に持ってるから」
「じゃあ良いと思うよ、泊まっても」
「そうする」
「ご飯どうする?何か作る?」
「お腹壊したくないんだけど」
「なんか失礼」
「だって君料理苦手でしょ」
「まぁ、確かに。
コンビニで何か買って来るけど欲しいものある?」
「僕も行く」
お財布だけ持って近くのコンビニに向かう。
制服のまま着替えてないや。
「そういえばなんで急に呼び捨てになったの?」
「別に、なんとなく」
「親に連絡入れた?」
「友達の家に泊まるって言ったから多分大丈夫」
「今日は何かあるの?
家に帰りたくなさそうだし」
「…兄貴が帰って来てるから、ちょっと気まずいだけ。
大した理由じゃないよ」
まぁ、そういうこともあるか。
私が深入りする必要もないし。
コンビニに入り、お弁当ブースに真っ直ぐ向かうと、おにぎりを数個取って会計に向かった。
「質素だね」
「そう言う蛍も似たようなものでしょ」
というか私とほとんど変わらない。