第36章 教育
「逆に及川先輩とかは苦手そうだね」
「…借りがあるからね」
「借り?」
「練習試合の時サーブで狙われた」
「…やりそう」
あの人ならやりかねない。
家に着き、鍵を開けると招き入れた。
「…お邪魔します」
「好きなとこ座って良いよ。
飲み物持って来るから」
お茶を準備しに背を向ける。
流石に緑茶飲めない人は居ないよね。
2つのコップに同じ量の緑茶を注ぐ。
「はい」
「どうも」
コップを受け取ると、1口飲んだ。
「何かあった?」
「…波瑠さん」
真剣な表情。
「波瑠さんと居ると凄くドキドキする」
え?
「イライラもするし、一緒に居たいとも思う」
「えっと…」
言葉から言いたいことを汲み取れってこと?
「つまり…そういう対象として見てるってことなんだけど」
「蛍…」
「何か言ってくれない?
この状況恥ずかしいんだけど」
何かって…。
「自惚れても良い…のかな」
勘違いだったら恥ずかしいよね。
「良いんじゃない?」
良いんじゃない、って。
「僕と付き合わない?」
「…うん」
好きって言葉を蛍の口から聞くことは出来なかったけど、今はこれで満足だ。