第34章 偶然
診察の結果、軽い切り傷だと判明した。
出血は多いが傷はそんなに深くはない。
通常の生活を送るには支障がないそうだ。
ただ1日だけ様子を見るように、とのこと。
「とりあえずは、なんともなくて良かったです。
ホッとしました」
強張っていた武田先生の顔にようやく笑顔が戻る。
「ご迷惑をおかけしました」
「迷惑じゃなくて心配ですよ。
別に気に病むことはないです」
「あれ、るぅ久しぶり〜」
この声…この呼び方…。
「及川先輩…」
及川徹先輩。
中学の頃の先輩で今は青城のセッターであり、主将だ。
「青城の及川くん⁉︎」
「烏野の監督さん、こんにちは」
「こ、こんにちは」
「るぅはケガ?」
「はい、まぁ」
「ふーん、珍しいね。
そういうことには人1倍気をつけてたのに。
そういえば近々合宿あるんでしょ?いつ?」
「あぁ、それなら来週末ですよ」
「それうちも参加したいなぁ、なーんて」
「え…」