第32章 寄り道
「私、ダイレクトデリバリーしか上げられないから。
研磨くんみたいなインダイレクトデリバリーは無理」
「なんですか?それ」
「インダイレクトデリバリーは普段リエーフくんが打ってるような、ふわっと放物線を描くようなトス。
ダイレクトデリバリーはうちのセッターが上げてるような、ズバッていう速くて一直線なトスのこと」
「ドンと来い!です」
「別に敬語じゃなくて良いと思うんだけど」
「波瑠さん、夜久さんとかより断然先輩っぽいんですもん。
なんかつい」
「あ、バカヤロー」
「え?」
「リエーフ‼︎」
「ひいっ」
「またあいつは…」
「学習しねェな」
「ふーん、彼女ちゃんは犬岡には上げんのに、リエーフには上げないんだ」
「犬岡くんの時は賭けだったんですよ。
試合中でしたしね」
「賭けねぇ。
それにしては随分手馴れてるように見えたけどな」
「昔から付き合わされてたんですよ。
あの単細胞セッターに」
「あぁ、あの天才セッターくんね」
「もうレシーブは勘弁してくださぁーい」
「彼女ちゃん、スパイクいけるか?」
「まぁ…」
「リエーフ、ブロック練すんぞ。
研磨、トス」
「えー…」