第29章 撃沈
「っ…」
拳を握り締めてワナワナと震えている。
相当プライドに触ったんだろうな、とテーピングを施しながら考える。
「波瑠さんだから許可したんだけど。
あんま馴れ馴れしく名前で呼ばないでくれない?」
結構言うね。
「照れなくても良いんですのに」
ポジティブを通り越して最早往生際が悪い。
面倒くさいな。
「はい、巻けたよ」
「どうも」
その後蛍は練習に戻って行った。
「本当なんですの…‼︎
あなたのような小娘…わたくしの足元にも及ばないというのに」
このタイミングでのそのセリフは負け惜しみにしか聞こえない。
それに…。
「あなたも十分小娘と呼ばれる年齢だと思うけど」
「…覚えてなさいよ…‼︎」