第29章 撃沈
翌日、いよいよ憂鬱な時が迫って来ていた。
それは放課後に行われる烏野高校配球部での活動。
「蛍くん、わたくしと一緒に参りましょう?」
「間に合ってる」
「照れなくても良いんですのよ?
わたくしと蛍くんでしたら、美男美女でお似合いのカップルですから」
隣に並ぶと腕を絡め取られていた。
最早可哀想を通り越して哀れだ。
「僕急ぐから」
絡まれた腕を振り解くと、足早にその場を去る。
「あっ、待ってよツッキー」
相変わらず蛍も大変だな。
なんて呑気なことを考えながら更衣室へ向かう。
まぁ、蛍ならあんな子になびくこともないし安心だよね…?
なびく?安心?
何考えてんだろ。
不本意ながらも蛍があのお嬢様と腕を組んだ時、少しイラッとした。
蛍になら触れられても良いと思った。
蛍と普通に話せてることがかなり誇らしい。
あぁ、これって…。
「…好きなんだ」
蛍のことが。
だからあのお嬢様にイラつき、蛍の隣だと安心するんだ。