第27章 狼
「日向、あいつキレると口悪くなるから気ぃつけろ」
コソッと日向に告げる飛雄。
「はい、続きどうぞ?」
2人を澤村先輩の前へと連れて行き、ニッコリ微笑む。
「続きってなんだ?」
不思議そうな顔をする澤村先輩とは裏腹に、ぎこちない動きでその場から離れようとする2人。
「また喧嘩でもしたのか?」
澤村先輩の声が低くなる。
「いっ、いいえぇぇ?」
挙動不審。
「ほぅ…」
澤村先輩の笑顔がどんどん濃く、深くなっていく。
笑っているのに笑っていない。
でもまぁ、自業自得だし。
私が助けてあげる義理はないよね。
「お前ら…なんとか言ったらどうなんだ…?」
今まさに雷が落ちようとした、その瞬間。
「すいませんっ、遅くなりましたぁっ」
遅刻魔という名の救世主が現れた。
「じゃあ田中はペナルティでフライング1周!」
矛先が田中先輩へと向けられたことにより、2人は恐怖から解放された。
「うっす」
素直に頭を下げると、床に身体をつける。
切り替えは早い。
「それじゃ、改めて朝練始めるぞ」
少し時間は削られちゃったけど。