第27章 狼
「天地がひっくり返ってもあり得ないから」
「ほんっと鈍感」
「はい?」
「マヌケな顔」
クスリと笑われた。
「蛍が変なこと言うからでしょ」
呆けるようなことを言った蛍が悪い。
「事実だと思うけど。
あんまり無防備だと、いくら僕でも喰うからね」
「頭に入れとく」
とりあえず歩みを進めないと。
「そういえば今日、あのお嬢様になんて言われたの?」
今日?
あぁ、あれか。
「蛍に近づくなってさ」
「何それ」
「知らない。
独占したいんでしょ。
蛍の為にマネージャーやるって言ってたし」
「迷惑なんだけど、そういうの」
「私も迷惑。
他人にどうこう指図されるの本当嫌い」
常に上から目線だし。
「波瑠さん、なんか目の敵にされてたしね」
「蛍から言ってなんとかならない?」
蛍の言うことなら聞きそう。
「嫌だよ、関わりたくない」
心底嫌そうな顔になった。
「そりゃそうだよね」
私だって関わりたくないから。