第23章 壊れた心
落ちるか、曲がるか、はたまた伸びるか。
ボールだけを目で、身体で見ながら神経を尖らせる。
どこにどう変化する?
分からないからとにかくオーバーで構える。
オーバーの構えをして、レシーブしようとした途端。
「あ…⁉︎」
手スレスレでボールの軌道が変わった。
チリ、と微かに指先が触れたが、落ちて来ていた筈のボールは直前にして左に逸れた。
威力が強い訳でもなければ、油断していた訳でもない。
「…不覚」
悔しい。
「っ、良し!」
嬉しそうだな。
「今の良かったんじゃない?
反応遅れちゃったし」
「うんっ」
「あとは少しでも思い通りに打てるようになれば、かなり使えると思うよ」
「分かった!
どんな時でも落ち着けるようにしなきゃだね」
「じゃあ次俺良いかー?」
「俺もだ」
「少しだけね」
「じゃあ10本」
「せめて5本」
「えー、少なくね?」
「文句言うならやらない」
「うっ…やる」