第5章 書類配りIII
「ボクはね、梨央ちゃん。君の事をずっと昔から知っているから君の性格をよく分かってる。人一倍責任感が強くて、仲間の為なら自分の命さえも犠牲にしてしまう子だ」
「……………」
「彼らを救おうとしたけど救えなかった。それを自分のせいだと責任を感じて、自分が罪滅ぼしをする事で彼らに報いる事が出来る。そう思ったんじゃないのかい?」
小さく頷く。
「百年という永い自由を奪われるかも知れないのに君は大切な仲間を守るために自分が囚われる道を選んだ。ボクはその判断、間違ってないと思うよ」
「京楽隊長…」
「ただね、ボクらは本当に君の事を心配していたんだ。この百年、ずっとね…。だから君がボクらに会いに来てくれた時は笑って迎えるつもりだった。君を許せないから突き放すなんて事…ボクらはしないよ」
「は、い……っ」
目頭に熱いものを感じて、それは涙が浮かんでいるからだと気付く。
「ね、浮竹?」
「お前の判断は正しかった」
「!」
「守りたかったんだろう?彼らが死神として生き抜いた証を。だからその代償がどんなものでもお前は選択をした。……優しいお前だからこそ出来た決断だ」
「浮竹隊長…」
「許す許さないじゃない。元からお前を笑って迎えるつもりだった。俺も、京楽も。それを許してくれるか不安だったから会いに来なかったというのはお前の勝手な思い違いだ」
「…………」
「そうだよ。誰も君を責めたりしない。君がこうしてボクらに会いに来てくれたことが嬉しいんだ」
「京楽隊長…」
「それでいいじゃないか。な?梨央」
「っ……はい…」
ポタリと一粒の涙が頬を伝い、膝に置かれた拳の上に落ちた。顔を俯かせ、嬉しさで涙が溢れそうになり、口をキュッと結んだ。
「お前は俺達を甘く見過ぎだ」
「…すみません」
「でも元気そうで良かったよ」
「よく頑張ったな」
浮竹の大きな手が頭にぽんと乗る。
「「おかえり!」」
笑って迎えた二人の言葉に、流歌も涙を浮かべながら嬉しそうに微笑んだ。
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