第5章 書類配りIII
「弱気な君は珍しい」
「これでも怖いんだよ」
「蒼生がいたら叱られてるね。
“しっかりしろ!”ってさ」
「はは、確かに。
……仕方ない、覚悟を決めるか」
「それでこそ僕らの隊長だよ」
うじうじと悩んでいる間に隊首室に着いた。
「じゃあ…開けるよ?」
「うん」
流歌は深呼吸をする。
「浮竹隊長、戻りました」
「失礼します」
雅が襖を開けた途端、強烈なアルコールの臭いが漂った。思いきり顔をしかめた流歌は床に転がる酒瓶に視線を落とす…。
「(まだ飲んでた…)」
驚きつつも、雅は隣を見る。
「(…静かな怒りを感じる。)」
顔を俯かせたまま何も喋らない流歌に雅は苦笑した。
「おーご苦労様〜雅君♪」
「わざわざ取りに行かせて悪かったな」
「いいえ」
「ん?そっちの子は?」
京楽が不思議そうに流歌を見る。
「あ…僕は…その…」
心の準備をした筈なのに、いざ話掛けられると微かな緊張感が襲う。
「えっと…」
「彼は一番隊に配属された神崎君です」
困り顔の流歌を見兼ねた雅が咄嗟に助け舟を出してくれた。
「あ〜!山じいが自慢してた新人君だね!いやー君みたいな優秀な子が護廷に来てくれて嬉しいよ〜」
「そうか…君が噂の…」
陽気に笑う京楽と心配そうな顔をする浮竹。
「そう緊張せずとも楽にしてくれ」
「良かったら神崎君も少し休憩して行きなよ」
「あ…ありがとうございます…」
「浮竹隊長、お茶です」
「あぁ、ありがとう」
「酒饅頭です、京楽隊長」
「これ好きなんだよねー。ありがとう雅君」
「……………」
その場に正座で座るも、気まずさからか、二人の顔を見れなかった。その様子をお茶を飲みながら心配そうに伺っている雅。
「しかし君は澄んだ青い瞳をしてるんだな」
「え?」
「本当だ。まるで彼女と同じように綺麗な色だねぇ」
懐かしむように口にした二人。
「…“あの子”とは?」
流歌はわざと知らぬふりをして話を振った。
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