第50章 Fellow-贈る言葉-
「戻ったか石田雨竜。
随分と思い悩んだ顔をしているな」
「…ハッシュヴァルト。
貴方こそ随分と思い悩んだ顔をしている…」
「忘れたか。夜、陛下が御寝になられている間、私と陛下の力は入れ替わる。未来が視えるというのは───思い悩む事ばかりだ。そうだろう石田雨竜」
「!──僕の裏切る姿でも視えましたか」
「何故そんな事を言う。私は何も言っていないぞ。ただ、お前がこの真世界城の各所に仕掛けたものだけは幾つも見つけただな」
掌から落ちるのは幾つものチップ。
「…見覚えがありませんね」
「そうか。私はこのチップに使われている機構に見覚えがある。これには石田宗弦が持ち去った苦難の手袋(ライデンハント)に用いられていたものとよく似た、霊子を分解・拡散する機構か用いられている」
チップを指に挟めて云う。
「石田雨竜、お前はこれを真世界城中に仕掛けて何をしようとしていた?」
「言い掛かりだ」
「…言い掛かりか。
ならば証明してみせろ」
ハッシュヴァルトは剣を引き抜く。
「お前が裏切り者では無いという事をな!」
剣を振るえば壁が破壊される。
「待てハッシュヴァルト!!」
止めようとする雨竜の視界に入ったのは…
「石田…!」
「──黒崎───……!」
一護の姿であった。
「黒崎くん!」
「大丈夫か一護!!」
そこに織姫と茶渡も駆け付ける。
「!!」
その時、何者かの気配を感じたハッシュヴァルトは咄嗟に後ろを振り返る。
ガキィンッ!
片手に持っていた剣で何者かが振り下ろした刀を受け止めた。
「久しぶりだなハッシュヴァルト」
笑う梨央にハッシュヴァルトは冷たい眼をする。
「相変わらず愛想のない奴だ」
片足を上げてハッシュヴァルトを蹴る。
「!」
梨央の刀を弾き返し直様剣を縦に構え、襲いかかる足の威力を弱めた。そのおかげでハッシュヴァルトは軽く吹き飛んだ程度で済んだ。
「梨央!!」
「やあ」
ニコリと笑って一護達を見る。
「やっと追いついたよ」
相変わらず飄々としていて大人びた口調で話す。それに違和感を覚えた一護は首を傾げた。
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