第46章 Zero-零を受け継ぐ者たち-
此処は現実とは異なる世界。
「物語は終盤を迎えた」
掌にある指輪をギュッと握る。
「あとは…あの子が『復讐』を果たすだけ…」
悲しげに空を仰ぐ。
「“彼”の為に生きることを選んだ彼女。自分が消えることを条件に生き返った。全ては…母親を殺された復讐と…最愛の人を守るため」
そっと目を閉じ、切なげに笑う。
「(その選択はきっと『正解』じゃない…───。でも彼女は“選んだ”。だから信じよう、彼女の行く末を──……)」
ザワッ
「!」
その時、世界の歪みを感じ取った。
「なんだ…?」
嫌な予感がして椅子から立ち上がる。
コツ…
「!」
誰かが階段を登る靴音が聞こえた。
「(何故急に空間が捩れた…?)」
少女は警戒しながら、階段がある方に目を向ける。その靴音は段々と大きくなる。“少女”は念の為、霊圧を探ろうとした。
「(この霊圧は…)」
「───よォ。」
「!?」
ニヤリと笑んだ男が姿を現す。
「伏見蓮杜───!!」
“少女”は酷く驚いた。滅却師と同じ白装束を見に纏い、伏見家の紋章が刻まれた札を耳に付け、剣を手にしている。
「俺のこと知ってるってコトはだ…意識と記憶は共有されてんだな」
「キミ…何で『私』の存在を知っている?」
「“アイツ”が教えてくれたんだよ」
「…アイツ?」
「ユーハバッハだ」
「!?」
「お前も記憶を共有してんなら分かってんだろ。あの男には未来が見える。だからお前が梨央が暴走しない為に生まれた、ただの『保険』ってコトも知ってるってワケだ」
「(彼女が生き返ったことも知ってるのか…?)」
眉を顰めて伏見を睨み付ける。
「キミは…どこまで知ってる?」
「それはどういう意味だ?」
「彼女があの男に…刺された事は知ってるか?キミ達が当主になってしばらく経った後だ」
「へぇ…アイツあの男と会ってたのか。そりゃ初耳だわ。つーか刺されたのかよ。ハッ、弱え癖に勝てると思ってるから逆に刺されんだよ」
小馬鹿にした笑いを溢した。それを見て“少女”は確信した。“彼は彼女が死んで生き返ったことまでは知らない様だ”と…。
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