第35章 Apricus-優しい恋-
「これが絶品だと評されるショートケーキ!」
白い皿に乗せられたショートケーキ。
真っ赤に熟れた苺が飾り付けされている。
「メレンゲもふわふわ〜」
彼女の目はキラキラと輝いていた。
「食べてもいいですか!」
「どうぞ」
「いただきます!」
ふわふわのスポンジにフォークを刺し通す。
「なめらかに切れた…!」
それを口の中に運ぶ。
「っ!!」
衝撃が走った。
「お、美味しい…!!」
思わず感激してしまった。
「これは売れる」
絶対的な自信を持って答えた。
「ふ…くく…っ」
「!」
ケーキに夢中になっていると向かいの席から笑い声がした。
「隊長?どうかしました?」
日番谷が声を押し殺して笑っていたのだ。
「お前、思ってること顔に出すぎだぞ」
「!!」
「顔が緩みっぱなし」
「う…」
考えてることは表情に出さないようにしてる
それは戦闘にも影響するからだ
でも…甘いものにはやっぱり勝てないのだ
「本当…戦ってる時とは別人だな」
「そ、そんなに違いますか?」
「まず雰囲気が違えな」
「自分じゃわからないです」
「あと顔つきも違う」
「よく二重人格じゃないかと疑われます…」
「本当は二重人格だったりしてな」
梨央は日番谷をジッと凝視める。
「どうでしょう?」
ニコッと笑うだけだった。
「紅茶も美味しくて癒されます」
「子供みたいにはしゃいでたもんな」
「お、お騒がせしました…」
反省するように項垂れる。
「でも…」
優しい表情を日番谷に向けた。
「こんなに楽しいと思えるのは、きっと日番谷隊長と一緒にいるからです」
その言葉に日番谷はピタッと固まる。
しかも本人は自分が口にした発言に何の疑問も抱いていない。
「(っとに…タチが悪ィ…)」
これが俗に言う天然無自覚だ。
「隊長?顔を俯かせてどうしました?」
「お、まえな…」
「?」
「そういう発言は場所を考えろよ!///」
「!?」
顔を赤くする日番谷に突然叱られ、困惑する。
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