第18章 ヒャクネン ト サイカイ
「そうですか…全員無事…」
それを聞いてホッとした。
「心配かけたなァ」
どこか申し訳なさそうに謝る平子に被りを振る。
「なァ…梨央、最近調子はどうや?」
「は?調子?」
徐に口を開いた平子の声色は少し重みが混じっている。
突然何だとでも言いたげな眼で平子を見れば、彼はどこか真剣な表情でこちらを見返している。だがすぐにその意味を理解した梨央も表情を曇らせる。
「それは…“どういう意味”で聞いてます?」
口角を上げたまま、平子は声色だけを変えて再度、彼女に問うた。
「ちゃうな…質問変えよか」
低声になったかと思えば、ニヒルな笑みを消して梨央を見下ろす。
「“例の症状はまだ治ってへんのか”?」
その質問には答えず、冷たい眼を平子に向ける。
「沈黙は肯定と受け取るで」
「…私のこの症状は治らないケースが多いんです。なので治したくても治らない。けど…それが何だと云うんです?」
「オマエの“それ”は悪病や。そのせいでオマエは命を犠牲にしてきたんやろ」
「説教なら聞きたくありません」
「俺がオマエに説教たれた所でオマエは聞く耳持たへんやん。だから昔から何遍も云うてるやろ。“自分の命を大事にせえ”って…」
「…ご忠告感謝します」
「全然感謝してる顔には見えへんけどな」
平子は肩を竦めて呆れる。
「あれから…随分と大変やったみたいやな。喜助から全部聞いたで」
「!」
「俺らのせいで仲間と引き離されて心細かったやろ。堪忍なァ…まさかオマエが俺らの為にそこまでしてるとは思わへんかった」
「私が選んで決めた道です。
誰のせいでもありません」
「何で自分の自由と引き換えに監獄に監禁される道を選んだ?オマエにそこまでしてもらう理由はあらへんやろ?ああなったんはオマエのせいじゃ…」
「…せめてもの“罪滅ぼし”でした」
それを聞いた平子は大いに溜息を漏らす。
「ホント…相変わらずやな。自分より他人を優先させるトコ、全然変わってへん。ついでに…一人で何でも抱え込むトコもな」
「…それが私の生き方です」
「…阿呆。」
静かに怒る平子に悲しそうに笑う梨央だった。
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