第17章 ゲンセ ト カンチガイ
次の日───。
「まだ夜明け前だもんな…」
「これからお日様が顔を出すよ!」
「朝でも元気だなお前」
「まあね!!」
「うるせえ…」
声を張って叫んだ霙に蒼生は両手で耳を押さえる。
「いつもは遅刻して来るのに…」
「琉生は馬鹿にしてるのかな」
「怖ッ!?」
ニコリと黒い笑みで笑いかける。
「どこが怖いんだよ」
「その顔と声っスよ!寝起きで不機嫌MAXなオーラがさっきからダダ漏れてんスよ…!」
「琉生、ちょっと目潰しさせて」
「ぎゃあー!雅クーン!!」
悲鳴を上げながら琉生は雅の後ろに隠れる。その目には涙が浮かんでいる。
「琉生君、少し声を抑えて。梨央も機嫌悪いからって冗談言わないで」
「(ぜってぇ冗談で言ってない…!!)」
「チッ。」
「舌打ちした今!本気でオレに目潰しする気だったっスよ!!」
「してやれば良かったのに」
「詩調チャンまで!!」
ギュッ
すると誰かに腰に抱きつかれて振り返れば、顔を背中に埋めた霙がいる。
「どうしたの?」
「寂しい…」
「少しの辛抱だよ」
「…………」
「虚共が無関係の人間を襲う前に退治しなきゃ多くの犠牲者が出る。命を落としたら誰かが悲しむ。私達の仕事は虚を退治すること。そうだろ?」
背中に埋めていた顔をバッと上げ、泣きそうな眼で梨央を見る。
「今度はちゃんと帰って来るよね?」
「!」
「あの時みたいに…突然いなくなったりしないよね?」
「もちろん」
小さく笑んでハッキリと告げる。
「信じてるからね!」
その言葉に安心して霙は梨央から離れた。
「そろそろ時間だわ」
「穿界門が開くぞ」
「頑張ってね!」
「お土産待ってるっス!」
「こっちのことは心配しないで」
「寝坊しちゃダメだよ〜」
「遅刻も駄目よ」
「すぐキレるのもダメっス」
「キミ達自分の隊長に対して厳しいな!!」
穿界門が開く。
「行ってくる」
「気をつけてな」
仲間に見送られ、梨央は地獄蝶を連れて穿界門を潜った。
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