第16章 トモダチ ト ナカナオリ
「もし上からの指示が出されたのなら、必ず我々全員にも伝達する筈だ。だが我々は上からの指示など受けていない」
「そ、そんな…!」
「本当に別の監視役がきたのか?」
「た、確かに別の者が来ました。ですが引き継ぎの報告ではなくて…その者が【子】の“零時”を担当することになったという伝達しか聞いておりません…」
「どうなってるんだ…」
二人の監視役は戸惑いを浮かべる。
「…話が噛み合わないな。その日の時刻管理表は持っているか?」
「は、はい!こちらです!」
手渡された管理表を見る。
「確かに二十三時の担当はキミだな。では何故、“零時を担当した者の名前が書かれてない”んだ?」
時刻管理表には必ずその時刻に担当した者の名前を記入しなければならない。だが二十四時、つまり零時の時刻だけ、誰の名前も書かれていないのだ。
「じ、自分はちゃんと伝えました!必ず名前を記入するようにと!」
「書き忘れたか…いや…その可能性は低い。この時刻を担当した者は今どこにいる?」
「それが先程から全員で探しているのですが…未だ見つけられておりません」
「姿を消した?」
「ただその…ゴミ捨て場に我々が着ているのと同じ黒装束が捨てられていたそうです」
「!!」
「ほ、報告が遅くなって申し訳ありません!!」
ガバッと頭を下げた。
「ふぅ…そういうことか」
誰かが抜け穴を使ったな
どうやって侵入した?
犯人は?
「(全く…厄介ごとを持ち込んでくれたな)」
「どうしますか?四十六室に報告致しますか?」
「いや、それはやめておこう。あの連中のことだ。冴島兄妹を死なせた責任を上乗せして私が二人を殺害したという言いがかりを付けるだろうからな」
恨めしげに睨みつける。
「この件は私が一旦預かる。くれぐれも外部には漏らさないように。二人の処理は私がしておく。キミ達は至急監視モニターの復旧作業を急げ」
「「はっ!」」
両足を揃えて敬礼した二人は部屋から走り去って行った。
「秘密の抜け穴を知っていた。尚且つ違和感なく監視役としてこの監獄に潜り込めた者…」
心当たりが…無いわけじゃない
「犯人が『奴』だとすれば…まずいな」
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