第13章 特別隊首会
「それにあっくんは剣ちゃんと勝負するよりあたしと鬼事した方が楽しいって言ってたもん!」
「何ィ!?」
「嘘言ってんじゃねーやちる!!俺がいつお前との鬼事が楽しいなんて言った!?」
「あっくん今日も鬼事して遊ぼー!」
「誰がやるか!!」
「鬼はあっくんね!」
「お前ほんと人の話聞かねえな!?」
完全にやちるのペースに呑まれている蒼生はイライラが収まらず、怒りマークを浮かべている。
「やっちーと鬼事やってあげればいーじゃん」
「簡単に言うんじゃねえよ。あいつとの鬼事は命がけなんだよ」
「命がけ?何で?」
「…ジェット機並みの猛スピードで逃げるわ猫みたいにすばしっこくて捕まえられねーんだよ」
「蒼ちゃんの闘争心が足りないんじゃな〜い?」
「ふざけろ。しかもあいつが鬼役の時はまるで獲物を狩る鷹の如く秒殺で捕まる…」
「やっちー足速いからね〜」
「(速いってレベルじゃねえよ…。目をギラつかせて猛スピードで追って来んだぞ?めちゃくちゃ怖ェわ。)」
鬼役の時のやちるはこっちがビビるほど怖い。愛くるしい表情は一変し、本当に獲物を狩るかのように蒼生を追いつめる。
「(あいつとの鬼事はマジで疲れる…)」
蒼生の鬼役がほとんどなのだが、すばしっこいせいで中々捕まらず、追いつめたと思えば、猫のように俊敏で結局捕まえることが出来ない。やちるとの鬼事は毎回、凄まじいほどに体力を消耗するのだ。
「最後に…隊長」
それまでとは違い、山本の声音が低くなり、杖も軽く床に打ち付ける。
そして遂に流歌が姿を現した。
その瞬間、“彼”の正体を知らない者達は、まるで金縛りにあったかのように驚愕し固まった。
「えー僕はある意味有名人なので知らない人はいないと思いますが、一応自己紹介します」
間抜け面を並べる隊士達の顔に思わず笑いが込み上げる。それを必死に抑え込み、流歌は偽物の笑顔を浮かべた。
「前配属先は一番隊。
そして僕が零番隊隊長の神崎流歌です」
しんと静まり返る大広間に流歌の声だけが響く。言葉を失う隊士達の中に一際目立つ驚いた顔を浮かべた桃香がいた。
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