第1章 仕組まれた罠
「(なに勝手なこと言ってんだ。)」
じゃあ私は何のために来たんだよ
来たくもないパーティーに無理やり参加させられて
挙句の果てに二人で抜け出す?
「(…冗談じゃない。)」
この女、どこまで自分勝手なんだ
私はキミのものじゃない
「桃香と一緒に朝までキモチイイこと…しよ?」
「(上目遣いで見ても無駄なんだよ。こっちだって本来は女なんだから。)」
「流歌君に慰めてほしいなぁ❤︎」
「(嫌悪。)」
スルリと指を絡ませてきた桃香に嫌悪の眼差しを向ける。ここまで重症とは思わなかった。人の都合など一切無視。勝手に約束を取り付け、自分の欲求を満たすだけの相手を求める。
「(…なんて哀れなんだろうな。)」
絡められた指を解き、桃香の腕から遠ざかる。
「すみません」
「どうして…?」
わざとらしく目を潤ませ
泣きそうな顔で流歌を見てくる。
「桃香のこと嫌い…?」
「そういうお誘いは冴島四席の好きな方にしてあげてください。僕のような恋愛初心者にはハードルが高すぎます」
「ふふっ、恋愛初心者の流歌君も可愛い❤︎」
「(可愛いも何も女だからな。)」
「んー…言っちゃおうかなぁ」
「え?」
桃香が頬を染め、こちらを見ている。
「あのね…」
「(嫌な予感がする…)」
「桃香が好きなのは流歌君だよ❤︎」
「……………」
「だからなーんにも問題ないの♪」
何の問題に、とは聞かなかったが、流歌は嫌な予感が的中し、うんざり顔を浮かべる。
「何故…僕なのでしょう?」
「そんなの簡単だよぉ。初めて会った時から好きだったの❤︎これって一目惚れだよねぇ❤︎桃香と流歌君は運命の赤い糸で繋がってるから出逢えたんだよ♪」
「(くだらない…。何が運命の赤い糸だ。それで一目惚れなんてされたら迷惑だよ。)」
「恋の神様にお願いしたの。桃香を幸せにしてくれる人と出逢わせてくださいって。そしたら流歌君が桃香の前に現れたの❤︎」
桃香は恥ずかしそうに語る。
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