第11章 太陽の木漏れ日
その頃…
「遅れてごめん」
「期待を裏切らないわね」
「ん?」
「遅刻よ」
「あはは」
「笑って誤魔化さないで」
「詩調は厳しいなー」
へらりと笑えば、詩調は肩を竦める。
「リキュールも連れて来たの?」
彼女の腕の中にいるリキュールは短く手を挙げた。
「外の世界を見せてあげたくて」
「ついにお出かけデビューか」
「それに霙も喜ぶでしょう」
「そうだね」
人差し指を口元に当て、リキュールに言う。
「いいかい?外では人形のフリをするんだよ?見つかれば大変だからね」
リキュールはコクっと頷いた。
「霙はまだ来てないのか」
「いつもなら一番乗りに来てるのに…」
「仕事が長引いてるのかもね」
「もう少し待ちましょう」
だがいくら待っても待ち合わせ場所に霙は現れない。
「…遅すぎる」
「休憩が終わっちゃうわ」
「何かやらかしたか?」
「だとしても遅いわ」
「…………」
「本当にどうしたのかしら…?」
「約束を忘れてるってことはないと思う」
「えぇ、あり得ないわ」
「(彼女が遅れる理由は何だ…?)」
それと妙な胸騒ぎがする
気のせいか…?
「詩調、悪いけど霙を迎えに行ってくれる?」
「分かったわ」
ピクッ
突然リキュールが何かを感じ取った。
「どうした?」
そして手足をバタつかせる。
「そんなに暴れると落ちるぞ」
「急にどうしたの?」
「反抗期か?」
慌てたように身を捩らせるリキュール。
「待って…違うわ」
「!」
「リキュール、あたし達に何か伝えたいのね?」
表情は変化しないものの、焦るようにリキュールは詩調をじっと見つめる。そしてリキュールの伝えたいことを感じ取った詩調は驚いて目を見開いた。
「大変よ隊長!」
「どうした?」
「霙が…!!」
ザワッ
「「っ……!!?」」
僅かに感じた、不安定な霊圧の乱れ。
「今の霊圧…霙か!」
「っ、やられたわ…!」
「まさか…」
「急ぎましょう!」
「(どうか無事でいてくれ…!!)」
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