第8章 カタウデの少女
「この先の戦いにあんたは不要だと判断された。必要のない死神を残す程、あの連中は甘くねぇ。だから切り捨てたんだ」
「これも冴島桃香の策略の一つだったのよ。痛めつけてボロボロの姿を晒せば、あの連中は黙ってはいないわ」
「(彼女は卯ノ花隊長の役に立とうとした。それを見たあの女は彼女の存在が邪魔だったのだろう。)」
だから取り巻き達を使って
華月さんを痛めつけた
それでも彼女は挫けなかった
どんなにボロボロの姿になっても
尊敬する人の背中を追うために
その身を削って生き抜いた
「(さぞ悔しかっただろうな。思ったよりも彼女は強かった。だからこそあの女の苛立ちは収まらなかった。)」
そしてあの女は最低な方法で
彼女を護廷から追放することにした
「(痛めつけてその状態を晒すことで四十六室に彼女の存在を見つけさせたんだ。)」
そして運悪く、虚討伐でミスを犯した
普段しないはずの失敗
彼女は自分では気付かなかったが
身体は既に限界だったのだろう
殺せるはずの虚を殺せず
逆に返り討ちにあってしまった
「(そこをあの連中に目を付けられた…。)」
戦いに於いて勝利が全て。
その腐った言葉を裏切った彼女に
四十六室は失望したのだろう
使えない駒は切り捨てる
そんな連中だ、奴らは…
「(何が『勝利が全て』だ…虫酸が走る。)」
「尊敬する人の役に立とうと頑張った結果がこのザマね…」
「……………」
「本当は解ってたの。このままじゃ戦いに支障を来すことは…頭では理解してた。それでも…どんなにボロボロでも…あの人の役に立ちたかった」
悲痛な思いに詩愛はそっと目を閉じる。
「まぁ…今更もう遅いけど」
諦めるように肩を竦めた。
「あの人、今でも次のターゲットを見つけて同じような嫌がらせをしてるんでしょうね」
「実はそのターゲット、私なんです」
「貴女が?」
「冴島桃香の逆鱗に触れてしまいまして、今じゃ護廷の嫌われ者ですよ。いやァ…面倒な事件に巻き込まれました」
「面倒なわりに…とても声が楽しそうよ?」
「そう聞こえます?」
「えぇ、すごーく…ね」
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