第8章 カタウデの少女
「あら村長、いらっしゃい」
「お主に客じゃよ」
「お客?」
そこにいたのは腰まである青緑色の髪を伸ばした女性だった。
笑って振り向いた詩愛は梨央達を見ると不思議そうな表情を浮かべる。
「初めまして」
梨央の着ている死覇装を見て詩愛の顔が険しくなる。
「華月詩愛さんですね?」
「……………」
「先に言っておきますが我々は冴島桃香の追っ手ではないのでご安心を」
「どうぞ…上がって」
「ありがとうございます」
中に招き入れると詩愛は茶菓子を出す為に棚に向かう。
その後ろ姿に違和感を感じた梨央はじっと凝視める。
背中に刺さる視線に気付いたのか、詩愛は振り返ってニコリと笑む。
「何かしら?」
「いえ、何でもありません」
同じように笑んで誤魔化した。
「子供達と一緒に作った焼き菓子よ。
良ければ食べて」
「待ってました!」
後ろに座っていた霙が出されたお菓子を見てキラキラと目を輝かせる。その口の端から涎がタラリ…。
「美味しそうですな!」
「その前に涎拭けよ」
「うへへ」
「聞いちゃいねえ」
大好きなお菓子に夢中で蒼生の声など耳に入らない。
「鬼灯さん?」
「久しぶりだね詩愛たん!」
「本当に久しぶりね」
懐かしい再会に詩愛は目を細めて嬉しそうに笑う。
「久しぶりっスね、詩愛チャン」
「え…?もしかして…御影君…?」
「オレのこと覚えててくれたなんて感激っス」
「もちろん覚えてるわ。毎日懲りずにお茶に誘うからどんな言い訳して断ろうか考えてたもの。でも良かったわ。今じゃ誘われる心配もないからすごく安心なの。これでもう言い訳を探して逃げる必要もないんだって思ったわ」
「あ。なんかすげー傷付いた」
口元に手を添えて小さく笑う詩愛の容赦ない言葉に琉生は胸に手を当ててショックを受けた表情を浮かべた。
「ちょっと顔が良くてモテるからってすぐ手を出そうとする。るーたんは自分が相当な下衆野郎だってことを自覚しないと。どうせなら不細工に生まれて一生モテなければ良かったのにね!」
「霙チャンも自分が相当な毒舌家だってこと自覚して!?」
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