第1章 仕組まれた罠
誰が覚えるか
というか…随分と媚びた声だな
こういう女を“ぶりっ子”って言うんだろう
厄介なのに出会ったな…
「冴島四席はどうして此処に?」
「護廷に新しい人が配属されたって聞いて気になって見に来ちゃった❤︎」
「(仕事しろよ。)」
「うふっ❤︎想像以上にカッコよくて桃香ドキドキちゃう❤︎」
そんな理由で見に来るなよ
香水はキツイし
化粧は派手だし
喋り方は勘に障るし
「僕を見に来ても誰も得はしませんよ」
だから早くどっか行け
「流歌君を見るだけで目の保養になるんだも〜ん❤︎それに美形だしぃ❤︎桃香こんなカッコいい人と出会ったの初めて❤︎特に左目の泣き黒子なんかセクシーでドキドキしちゃうなぁ❤︎」
「そんなことないですよ」
何が目の保養になるだ
簡単に言えば顔狙いだろ
美形じゃなきゃ寄って来ないって
「わからないことがあったら遠慮せず桃香に聞いてねぇ❤︎流歌君の為なら桃香、付きっきりで教えてあげるぅ❤︎」
「それは助かります」
冗談じゃない───!!
張り付けた笑みのまま、心の中で拒絶する。
「(彼女の考えてることは丸わかりだ。)」
男である“神崎流歌”に気に入られたい
だから今のうちに媚を売ってポイントを稼ごう
そうすれば絶対にオチる
更に付け加えると
イケメンを捕まえれば
周りの奴らに自慢ができる
「…馬鹿女。」
「?何か言ったぁ?」
「何でもありません」
すぐさま笑顔に切り替える。
“これ”が戦いに生きる戦士とは…
死神も落ちたものだな
「桃香も手伝ってあげるぅ❤︎」
抱える書類に手を伸ばそうとした桃香の手を拒絶してニコッと笑む。
「女性の手を汚させる訳にはいきません。火傷でもしたら大変ですから」
「心配してくれるなんてぇ〜桃香すっごく嬉しい❤︎」
そんなわけないだろ
お世辞って気付けよ
「せっかく綺麗な手をなさってるんですから、ここは男の僕に任せてください」
「流歌君❤︎」
少し優しくしてやれば、桃香は目をハートにさせて流歌を見つめる。
.