第8章 カタウデの少女
無意識に放たれた威圧感に老人は顔をしかめた。まるで『答えは“YES”しか認めない』とでも言っているかのような眼を向け、にこりと笑んだ。
「死神なんか信用してたまるか!」
村の男が憎らしげに言った。
「お前らのせいであの子は…!」
「あんた達があんな優しい子を傷付けたから…!」
「絶対に許さない!」
「(…なるほど。)」
どうも憎悪に満ちてると思えば
この村は死神嫌いか
「お姉ちゃん、詩愛姉に会いたいの?」
「うん。“詩愛姉”はいるかな?」
「お家にいるよー!」
「お菓子作って食べたの!」
「お菓子ですと!?」
「反応すんな」
「…あい」
お菓子という言葉に瞬時に反応した霙はキラキラとした目を輝かせ、その口からは涎が垂れている。それを蒼生に咎められ、シュンと落ち込んだ。
「そうか…家にいるんだね」
ニヤリと笑う。
「子供は素直が一番ですな」
「…………」
「この子達に罪はありません。私の質問に答えただけです。どうか叱らないであげてください」
「…何故お主が詩愛を探しておる。あの女の差し金か?あの子を連れ戻しに来たのか?」
「あの女と同類に思われては困ります。私はただ彼女に会って話がしたいんです」
「会って何を話す?」
「真相を」
「!」
「全てを終わらせる為の真相を知りたいだけです。それには彼女に会う必要があります」
「ふざけんな!」
「おや?何かご不満でも?」
「不満だと?そんなのあるに決まってんだろうが」
「これは手厳しい」
クスッと笑いを溢す。
「彼女に危害を加えるつもりはありません」
「そうやって信じ込ませてあの子を傷付けるつもりだな」
「あの子がどんな思いでこの村に帰って来たと思ってるの!」
「死神を辞めたあの子は可哀想だったわ…」
「お前らが詩愛の人生を狂わせたんだ!」
「出て行け!」
「もうあの子に関わるな!」
「二度とこの村に近づかないで!」
罵声が飛び交う。
「(あぁ…また“雑音”が。耳障りだな…)」
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